car.iniのいじり方

car.iniには、車に関する(画像や3Dモデル以外の)重要なデータがほとんど入っています。車の製作者が設定すべき要素は膨大な量になっており、そのすべてを把握するのはかなり大変なので、まずは多くの人が実際にいじって見たいと思うであろう項目から順番に解説していこうと思います。既存の車のcar.iniファイルを参照しつつこのページの解説を読んでいくとわかりやすいでしょう。なお、iniファイルの書き方に関しては「iniファイルの構造」をどうぞ。

また、このファイル内で設定することの多くは、実際の車の整備においてもほとんど同じような手順で調整されています。したがってcar.iniファイルの設定を細かくいじろうとする場合、どうしても車に関する知識が必要になってきます。この解説ページですべての用語を説明していくわけにはいきませんので、できればご自分でも本などを読んでおくことをおすすめします。ポール・フレール氏の著作である「はしるまがるとまる―もっと楽しいクルマの運転」や「新ハイスピード・ドライビング」などがわかりやすいです。

engine

curve_torque

例:curve_torque=torque.crv

.crvファイルの名前を指定します。.crvファイルの編集に使う「Curved」というプログラムについては別のページでどうぞ。

以前にも解説したように、crvファイルには、一般的には「エンジン性能曲線図」などと呼ばれるグラフが保存されています。実際に車メーカーのウェブサイトをのぞくと、特にスポーツカーの紹介ページにはほぼ必ずこのグラフが置いてあります。Racerにおいて、このグラフはエンジンそのものだと考えていいでしょう。

crvファイルを他の車と交換してやると、実車で言えばエンジンを交換したのと同じような状態になります。最近、藤原とうふ店仕様トレノにホンダのS2000のcrvファイルを使わせたりして遊んでいるのですが、やはりタイムは縮まりますね。Carlswoodでのタイムはcrvファイル交換前1分31秒、交換後1分26秒ってとこです。それでもアウディA4より遅い。。。

max_torque

:max_torque=267

crvファイルに収められているグラフの「縮尺」を決定します。グラフ上の一番大きい値が実際には何Nm(ニュートンメートルの略。1ニュートンメートル=1ジュールです)を示すのかということを決定してやることで、実車のカタログに載っている値をそのまま使うことができます。(実際には本物の車と同じ値を使うとかえっておかしくなるということもあるようですが…)

max_rpm

普通、車にはレブリミッターというものが付いており、負荷がかかっていない状態でもある一定の回転数以上にはエンジンが回らないようになっています。ここでmax_rpmの値を指定してやると、指定した回転数でリミッターがかかるようになります。なお、max_rpmを書かないでおいても、toruque.crv内のグラフは多くの場合途中から右肩下がりにトルクが落ちていき、最終的にはゼロになっているので、そのゼロになった時点でエンジンの回転数が上がらなくなります。

mass

エンジンの質量を決定します、単位はキログラム。これは最終的な車の質量にも関わってくる値です。

例えばNSXのエンジンは205kgありますし、それに対してRX−8のエンジンはロータリーだということもあって124kgしかないそうです。また、F1カーの場合は、今年のレギュレーションでは最低重量が95kgと決められています。他にも軽自動車のエンジンなんかは50kgほどだったりもします。このように、エンジン重量もまた車の特性に大きく関わってくる値です。

さて、ここまでが「エンジン」そのものに関するデータです。エンジンの換装っぽいことをしたいときはここまでの4つの項目をコピーするといいでしょう。

gearbox

実際の車で言えばそのままギアボックスにあたる項目です。実はギア比を見直すだけで案外タイムが縮まったりします。

gears

まずギアの数を指定します。リバース(後退するときに使うギア)も数えるので、6速まである車ならgears=7になります。5速しかない車を6速にしたいときはgears=6となっているのをgears=7としてやればいいです。

gearX

「x」には適当な数が入ります。gear0が普通はリバースギアになっていて、gear1が1速、gear2が2速というのが一般的。

ここには「ratio」と「inertia」という二つのパラメーターが存在しますが、重要なのは「ratio」のほうです。ratioというのは「ギア比」のことであり、この数字が小さければ小さいほど「重い」ギアになります。このギア比、実車とほとんど同じような数値になっていることが多いです。

最高速を伸ばしたいのであれば、全体的にギアを重めに(ratioを小さく)設定した方がいいです。逆にギアが重過ぎる車(ランボルギーニとかw)はratioを大きくすることでギアを軽く設定してあげるといいでしょう。また、勝手に7速まで作ってしまったりするのもそれはそれで便利です。最高速を出したいだけなら、6速だけやたらと重くしておくとお手軽です。

ただし、「速く走る」ことを追求するなら、ギア同士の関係にも注意しておく必要があります。馬力計測という、なかなか面白いサイトがあるのでどうぞ参考に。「馬力計測の活用」内の実践編とかにギア比に関してもいろいろ書いてあります。

なお、「inertia」というのは「ギアの重さ」みたいなことです。本当は「慣性」という意味なのですが、基本的にはギア比が低いギアほど、部品としての重さは軽いです。新しくギアを足したいのなら、inertiaに関しては前後のギアと同じような値にしておくと無難です。

handbrakes

wheels

どの車輪にハンドブレーキ(サイドブレーキ)がかかるかを決めます。ほとんどの場合はwheels=23と設定してやればいいです。普通、左前輪が0・右前輪が1・左後輪が2で右後輪が3となっていますが、必ずしもそうする必要はないため、wheel0とwheel1を後輪にしている人もいます。そういうときはwheels=01としてやったりしてください。

ハンドブレーキは4輪すべてにかかるようにも設定できます。また、前輪だけにかかるなんてことも当然できます。

wheel

この項目では各車輪ごとの設定をしていきます。実際のcar.iniを見るとわかりますが、この項目は

wheel0
{
....
}
wheel1
{
...
}

てな具合に一つ一つの車輪ごとに書いてやります。しかし!

iniファイルのリファレンス機能を使うことによって、前輪と後輪の設定を書くだけにしてある場合が実はほとんどです。リファレンス機能の解説を読んでみてください。リンク先の解説では「susp」での使い方を例にしていますが、wheelも全く同じことをしてやればいいだけです。

max_braking

ブレーキが車輪の回転を止めようとする力の最大値を決定します。各車輪ごとに設定できるため、前輪と後輪のブレーキの効き具合に差をつけることができますし、左右で効き具合を変えることも可能(乗りにくくなるだけですがw)です。

braking_factor

これはブレーキの効き具合の変化にリニアリティーを設定するためのパラメーターです。コントローラの設定 Advancedでは、ハンドルの切れかたの設定に関してリニアリティーを説明していますが、Advanced画面ではブレーキにももちろんリニアリティーを設定できます。car.ini内で設定せずともコントローラ側で設定できるので必ずしもcar.iniに書いておく必要はないのですが、braking_factorであらかじめ設定しておくこともできます。

braking_factor=1なら完全に直線的にブレーキの効きが変化します。1から0までの値だと、Advanced画面でリニアリティーを下げていった状態になります。さらに、1から2までの値をいれると、最初からドカンとブレーキが効いて、さらに強くブレーキを踏んでもあまり効きが変わらないという感じになります。

max_handbrake_torque

ハンドブレーキの強さの最大値を設定します。いわゆる「サイドドリ」をしたいのならすごく重要になってくるところですので、実際にハンドブレーキを使ってドリフトしてみて、ちょうどいい強さに設定しましょう。

lock

前輪の切れ角を設定します。この値が大きいほどにハンドルがたくさん切れるようになるのですが、反面ちょっと操作しただけで車の向きが変わってしまい乗りにくくなってしまいます。峠っぽいコースを走るにはそのままでもいいと思いますけど、サーキット系のコースを走るには多くの車はハンドルが切れすぎです。なのでlockの値を小さくしてやった方が乗りやすいはずです。

susp

サスペンションの設定。実際にはsusp0、susp1、...という具合にすべての車輪に対して設定していきます。これまでに扱った項目よりもかなり高度な内容であり、ちょっと調整したぐらいだと乗った感じではあまり変化を感じないかもしれません。本を読んだりして真面目に研究して、サスペンションについても多少はわかるようになりましたので解説していきたいと思います!

k

サスペンションの基本的な部分は「ばね」(スプリング)であるということは誰でも想像できると思います。この「k」というパラメーターはその「ばね」の強さを設定するためにあります。実際のレース用に使う車のチューニングにおいては、必ずといっていいほどこのバネをかなり強めにしてあります。一方、街乗りに使う一般車はずっと弱め。弱いということはつまりやわらかいということであり、その分路面からの衝撃を吸収してくれるため、乗り心地はよくなるのです。一方、サスペンションをF1カーのごとくガチガチに硬くしていくと当然車の動きも硬くなり、でこぼこな路面では車輪が浮いたり接地したりでマシンの挙動が逆に不安定になってしまい、スピンしやすくなります。ていうか単純に乗りにくくなる。しかし、サーキットでは硬めのサスペンションを使ったほうが良く曲がると考えてください。

普通、サスペンションは前輪と後輪でばねの強さに差をつけることにより、アンダーステアな特性、オーバーステアな特性を与えることができます。一般的には、前輪をやわらかくするか、後輪を硬くするとオーバーステアになり、前輪をかたくするもしくは後輪をやわらかくするとアンダーステアになると言われています。アンダーステアは「曲がりにくい」という意味の言葉だと考えていいと思いますが、その対義語のオーバーステアは必ずしも「曲がりやすい」ということでもないです。オーバーステアだと後輪がスライドしやすくなるので、Carlswoodのような中・低速コースではドリフトが簡単にできるようになるものの、例えばNurburgring Nordschleifeのようなタイプの高速サーキットでは、150キロとかで走っている時にリアが流れ出すとコントロールできずスピンしてしまうということもあります。

このあたりのセッティングを決めていくのは非常に難しいです。すでにcar.iniがちゃんとしている車であれば、もとの数値から減らしたり増やしたりしつついじっていきましょう。ただ、思い切ってばねの強さを半分ぐらいにしてしまうと、車の動きがあからさまにふにゃふにゃしてくるのがわかりますので、一度は大きな変更を加えてみたほうが車の仕組みがよりわかりやすくなってくると思います。

実車用の解説書を読んでみるのもいいでしょう。しつこいですが、ポール・フレール氏の「はしるまがるとまる」と「新ハイスピード・ドライビング」をぜひ読んでみてください。どちらもそう分厚い本ではないのですが、「運転」に重要なことが全て書かれている本です。ただ、車のメカニズムに関する解説があまりないので、本の中に出てくる車の部品の名前がわからないことが多いはずです。他にも一冊、車のメカニズムの図解本を併読しておくとより理解が進みます。私は「カー・メカニズム・マニュアル〈ベーシック編〉」という本で勉強しました。なお、これまでにあげた書籍はどれも比較的有名な(そして少し古いw)本なので図書館などにも置いてあるかもしれません。

なお、走り屋への道(突然閉鎖してしまいました…)というサイトもおすすめです。ドリフトの話ばかり書いてありそうなサイト名ですが、ふたを開けてみると非常にわかりやすくツボを押さえたサイトです。

さて、実際にRacerの車のcar.iniを見てみると、例えばランエボ7の前輪はk=38000、後輪はk=32000となっていますが、それに対してNSXは前輪k=82500、後輪k=78000です。全然違いますね。

bump_rate

サスペンションにはバネ以外に、ショック・アブソーバーというものがついています。なお、この部品を「アブソーバー」と呼ぶ人、「ショック」と呼ぶ人、また「ダンパー」と呼ぶ人もいまして多少まぎらわしいのですが、全て同じ部品のことを指す言葉だと考えてください。Racerでは「ダンパー」という単語を使っているのでこの解説ではそれに従います。

さて、ダンパーとは一体何か?一度、ダンパーの設定を全てゼロにしてみてください。どれだけスプリングを硬くしてあったとしても、車のゆれがまるで止まらなくなるはずです。そう、ダンパーとはスプリングの伸び縮みを邪魔してやることによって、車のゆれを収束してやるための部品なのです。

ダンパーは車の「姿勢変化」をおさえる部品です。最終的に車が傾く「量」を変えるのはスプリングなのですが、ダンパーによって車がどのように傾きだすかを変化させることが出来るというわけです。スプリングだけを強くしても車の動きはカタくなってきますが、案外ふにゃふにゃした動きになってしまうはずです。ダンパーも強くすることによって、車の挙動をよりシャープにしていくことができるのです。

bump_rateでは、スプリングが縮もうとする動きをどのぐらい邪魔するかを設定します。ここでもランエボとNSXの設定を見てみましょう。エボ7は前輪がbump_rate=2100、後輪bump_rate=1800で、NSXは前輪後輪ともにbump_rate=7000。スプリングを強くするなら、ダンパーも一緒に強くしなくてはいけないということです。なお、前輪後輪同じ値になっているというのは高確率で作者の手抜きですw自分でさらに細かくセッティングしていけばもっと速く走れる可能性は高いです。

rebound_rate

次に、こちらは逆にスプリングがのびようとするのを邪魔する機能を設定するパラメーターです。こちらもダンパーの機能の一部ですので、bump_rateといっしょに設定してあげましょう。

エボ7は前輪がrebound_rate=3250、後輪がrebound_rate=2250で、一方NSXは前後輪ともrebound_rate=7500となっています。参考にしてみてください。

なお、特に後輪のrebound_rateの値が小さすぎると、リアが流れ出してもちょっとカウンターステアを入れただけですぐにまたグリップしてしまい、ドリフトしづらくなります。小さい値にしすぎないようにしたほうがいいでしょう。

restlen

サスペンションの自然長を決定します。車高を落としたいときはこの値を小さくしてやるといいでしょう。なお、k(バネの強さ)を大きくしていくと、たいてい車高は上がってしまいます。そういうときにもこの「restlen」を調整してやってください。なお、全ての車輪の自然長を短くすると、たいていはよりオーバーステアになります。

minlen

サスペンションの最小長を設定します。縮みきった時の長さですから、これが低すぎるとジャンプ後着地した時とかに底をこすります。

maxlen

サスペンションの最大長(伸びきった時の長さ)を決めます。これを長めにとっておくと、段差の多いコースでは路面に吸い付くように車輪が動いてくれます。しかし、普通のサーキットを速く走るためにはあまり伸びないようにしておいたほうがいいでしょう。

以上、サスペンションについておおまかに解説しました。これまでにあげたパラメーターだけでサスペンションの調整はほとんど終わってしまうので、さらに詳しく設定せずとも楽しめると思います。

steer

ステアリング(ハンドル)に関する項目。これはおもに「乗りやすさ」に関連した設定になってきます。

linearity

ステアリングの切れ方にリニアリティーをかけるかどうかの設定です。コントローラの設定 Advancedでのリニアリティーの設定ととまったく同じことです。なので、car.ini内ではlinearityを全て「1」に設定しておくべきだと考えています。

lock

「wheel」内のlockと同じような設定なのですが、こちらは運転席画面で表示されるハンドルの切れ角を設定します。つまり、steer側のlockの値をどう設定しても、実際に前輪が切れる角度には何の影響もないのです。前輪の切れ角を小さくしたのに運転席画面のハンドルはやたらとたくさん回っているのが不自然に感じたらこちら側も一緒に設定しましょう。また、ステアリングコントローラーを使っていて、自分のコントローラーのハンドルの切れ方を画面上のハンドルと同じようにしたいという場合にもこのパラメーターを設定してください。

ff_factor

フォースフィードバック機能(コントローラーがブルブル振動する機能、ステアリングコントローラーの場合はステアリングが重くなる)の強さを設定できます。デフォルトでは1に設定されているようです。

aero

いわゆる「空力」に関する項目です。F1においては今やもっとも重要な部分になりつつありますね。ここでは車と言うよりもむしろ飛行機に近い話になりつつあります。

wings

まず「wings」でウイングの数を決定します。なかには「wings=1」とだけ書いてあるものもあり、この場合は車全体の空力特性が一括して指定してある、と言うことになります。そういう場合にはいじらない方がいいかもしれません。

wingX

xには適当な数字が入ります。たとえばwing0、wing1など。基本的にはどんなに多くてもwing2までしかありません。wing0から始まるのでwing2までなら合計で3つですね。

「overall aerodynamic effect」や、「body」「diffuser」「lift」などと言う名前がついているのは、車のボディ自体の空力特性です。例えばname=Body,Diffuserなどとなっていいるのがそれです。実際の車においては、車の底面にディフューザーと呼ばれるパーツを追加したりして、ウイング以外のパーツによる空力性能の向上を図ることもできますが、Racerにおいてはここはあまりいじらなくていいでしょう。

フロント・ウイング

一方、「front diff」や「front wing」、「front air dam」などという名前が付いているのは、いわゆるフロントウイングのことです。

  wing1
  {
    name=front diff
    span=1
    cord=1
    coeff_drag=5
    coeff_down=0.4
    center=0 0 1.3
    angle=0
    angle_offset=1
  }

これはロータスエリーゼのcar.iniファイルの抜粋です。写真などを見てもらえばすぐわかると思うのですが、ロータスエリーゼのフロント部分は物凄い形をしています。あの車はエンジンが後ろにあるので、ボンネットをくりぬいてしまって完全に空力パーツ化してしまっているのですね。このようなフロント部分のパーツを「エア・ダム」や「フロント・スポイラー」などと呼びます。これがあることでフロント部分でより多くのダウンフォースが稼げるため、高速走行時のアンダーステアを消すことが出来ます。NSX-Rにもほとんど同じような構造が使われており、エリーゼと同じ理屈でセッティングすることが可能です。

フロントウイングのセッティングが容易かつその効果が最もわかりやすいのがF1をはじめとしたオープンホイール車両です。ああいったタイプの車はまさしく「フロントウイング」そのものが付いており、サーキットに応じて違うフロントウイングを用意するのはもちろん、レース中でさえピットイン時に調整することが可能です。

ついつい話が長くなりました。結局のところ、ウイングというのは角度をきつくすればするほどより多くのダウンフォースを発生させてくれます。具体的には「angle」の値をもっと大きくしてやることによって角度をきつくできるので、「良く曲がる」車を作りたければangle=36になっているのをangle=44にしたりすればいいのです。

ただし!ウイングをきつくすればするほど空気抵抗(ドラッグ)が増えてしまいます。最高速を伸ばしたければフロントウイングを水平に近くして、むしろ積極的にアンダーステアが出る&抵抗が小さくなるようにしたほうがいいです。

リア・ウイング

一般的な車(いわゆる「ハコ車」)においては実は一番重要な項目です。「rear diffuser」、「rear wing」、「rear spoiler」などという名前が付けられています。

さて、ここからは空気力学のお話。一般的な車の形(底面が平らで上半分が丸い)というのは、飛行機の翼の形に近いです。つまり、車というのは速く走れば走るほど「浮いて」しまうようになっているのです。車を浮かせようとする力のことを揚力(リフト)と呼びます。

揚力が加わると、その分タイヤにかかる荷重は減少してしまい、グリップは低下します。それが前輪に起こればステアリング操作が利かなくなってしまうし、後輪に起こればリアが暴れやすくなり高速走行時にスピンしやすいという極めて危険な特性を持ってしまいます。つまり、車は基本的にダウンフォースがあればあるほどいいものなのです。

特に後輪駆動車においては、後輪のグリップが確保できないとスピンしやすくなるだけでなく、加速性能が悪くなってしまいます。スーパーGTやドイツのDTM(ハッキネンが出てるレース)でおなじみのあの巨大なリアウイングは、実は非常に大切なものなんです。

さて、実際のセッティングに関する話に移りましょう。フロントウイングは立てていくことによってアンダーを消せますが、ではリアウイングを立てるとアンダーが出てしまうのかといえば必ずしもそうではないんです。むしろ、より多くのトラクションを得ることが出来ると考えた方がいいでしょう。リアウイングを立てれば立てるほど、コーナーの立ち上がりは早くなりますし、高速コーナーも安心して曲がっていくことができます。ただ、最高速を重視するのならやはりリア・ウイングも寝かせたほうがいいです。angleの値を小さくしてやるということですね。


「Racerの解説」の目次