本当にしつこく言っているのですが、このページを読むより先にまずポール・フレール氏の「はしるまがるとまる―もっと楽しいクルマの運転」と「新ハイスピード・ドライビング
」を読んでください。特に「はしるまがるとまる」の方は、実際に運転をする際、あるいは免許を取るために教習所に通う際に知っておくと非常に役に立つ知識が書かれているうえ、「前輪と後輪のスリップアングルの差」を中心にしたオーバーステアとアンダーステアについてのものすごくわかりやすい解説があります。あの2冊の解説があまりに必要十分かつわかりやすいため、ここでは理論的な部分については詳しくは解説しません。
さて、これだけ言ってもまだ読もうとしない人のために(笑)ある程度アンダーステアとオーバーステアについて解説しておきます。アンダーステアというのはステアリング操作(ハンドル操作)に対して実際に車が曲がる量がアンダーである、ということです。オーバーステアはその逆。
つまり、アンダーステア(以下アンダーと表記)とは前輪の切れ角をそのまま延ばした曲線よりも大回りに車が曲がってしまうということ。逆にオーバーステア(以下オーバーと表記)のときは前輪の切れ角が小さくてもそれを上回る量で車の向きが変わっていくのです。
オーバーステアは、後輪が滑り出さずとも起きます。しかし、オーバーステアな状態では後輪が流れやすくなっているといえます。前輪駆動車でさえ、セッティングによってはブレーキングでしょっちゅうリアが流れます。リアを流すのに必要なのは、アクセルを踏むことではなくて、オーバーステアなのです。
さて、説明もなしに「リアが流れる」という言葉を使っていましたが、リアが流れるとは後輪が横に滑る、ということです。
本来、タイヤが横方向に滑る状態に対する名称は「スライド」が正しいです。リアが流れる=後輪がスライドする、ということ。
で、ここで「ドリフト」という単語が出てきます。もともと、後輪を少しだけスライドさせながらコーナリングすることをドリフトと呼んでいたのですが、日本人の言う「ドリフト」はむしろ「派手に後輪をスライドさせて走ること」ですね。
なのでこのサイトでは日本特有の「ドリフト」という単語を、「派手に後輪をスライドさせて走ること」という意味で使っていきます。
さて、文章ばかりではつまらないので、さっそくRacer上でリアのスライドを体験してみましょう。最初に使用する車はGreg氏の作ったシルビア(リンク先ページ「ENTER」を押し、メニューの「Racing addons」からcarsを選択。「Nissan Silvia S14 Final」の右にある「Download」からダウンロードできます)を強く推奨します。
実際、D1グランプリ(世界最高峰のドリフト大会!)でもいまだにシルビアを使っている人が何人もいたりと、ドリフトのしやすさに定評のある車です。Racer上でも本当にドリフトしやすいので初心者にはうってつけ。
ではさっそく、Carlswoodあたりを走ってみましょう。どこでもいいので、コーナーを曲がっているときに思いっきりアクセルを踏んでみましょう。ただし、そのままでも十分曲がれるスピードまで車速を落としてからやってくださいね。ギアを2に入れて、4・5千回転で走っていればちょうどいいスピードになるはずです。アクセルは容赦なく全開で踏んじゃってください。
思いっきりリアが流れて、場合によってはスピンしますね。リアが流れているとき、車はオーバーステアな状態にあります。ハンドルをいつもと同じ量切っていたら、それを上回る量で車が曲がっていってしまうので最終的にスピンしてしまうのです。さて、ここでスピンしないために必要な技術が「カウンターステア」。
カウンターステアとは、リアが流れ出したときに車が曲がろうとする方向とは逆方向にハンドルを切ること。実際にリアが流れている状態では車がどんどんコーナーの内側を向いていきますので、普通に走るときと同じように道路が続いている方向へ前輪を向けようとすれば自然とカウンターステアがあたっていることになります。(ただし、車や走り方によっては相当な量カウンターステアを入れる必要がある)
今度はコーナーを回る途中でアクセルをリアが流れ出したらすぐにカウンターを入れてください。この動画の場合はリアが流れ出すと同時に左にいっぱいにハンドルを切ってます。
タイヤが左を向いているのがわかると思います。この動画ではわざと、アクセル踏みすぎ&カウンター入れすぎにしています。しかし、見た目はださいもののカウンターはちゃんと当たっています。
では、カウンターステアの練習を兼ねて、今度はサイドブレーキ(英語では「ハンドブレーキ」)を引いてみましょう。ノーマルの設定だと、サイドブレーキのボタンがデジタル入力の場合は効きが強すぎますのでだいたいmax_handbrake_torque=3000ぐらいに設定するといいでしょう。
それでは、再びCarlswoodに戻り、サイドブレーキを引いてみましょう。サーキットの横にある空き地でもいいし、サーキット内のヘアピンなどを使ってもいいので、かならず車が曲がっているときにサイドブレーキを引いてください。
なお、サイドブレーキ(以下サイドと表記)を引くのは必ずクラッチを踏んでからです。今回は、クラッチを踏んだままで(クラッチのボタンを押しっぱなしにして)、サイドのボタンも押しっぱなし、という感じでいいです。
これは必ずスピンするはずです。
先ほど紹介したカウンターステア(以後カウンターと表記)という技術が、ここからより重要になってきます。
では次。クラッチを踏んでサイドを引いて、リアが流れ出したらすぐにサイドのボタンを離す。そしてクラッチのボタンも離し、カウンターを入れつつアクセルを踏む。これは一連の動作としてだいたい1秒ほどの間にすべてを行います。これがすべて完璧にできれば…
こんな感じでドリフトできるのです。
ヘアピン進入時のスピードは2速で3・4千回転ぐらいでちょうどよくなるはずです。
なお、クラッチを切ってサイドを引いている間に軽くアクセルを吹かしておいてやるとクラッチをつないだ後の立ち上がりが早くなります。もちろん、クラッチをつないだ後のリアの空転も大きくなるので、スピンの危険性も上がるんですけどね。とはいえ、最初のうちは「スピンしていこう!」ぐらいの気持ちで思い切っていきましょう!
感覚がある程度つかめてきたら、次は「スピンしないこと」と、「車を止めてしまわないこと」を目指してください。
まず、サイドを引いた後、アクセルを踏みすぎてスピンするというのが一番よくあるパターン。
アクセルは適切な量にとどめなくてはいけません。また、カウンターの量が足りなくてもスピンします。さらに、サイドを引く時間が長すぎてスピンというのもありがちです。馴れてくればサイドは一瞬引いてやるだけでリアを流せるようになるはずです。
次に、スピンはしないものの、アクセル量が少なすぎて車が止まる、あるいは極端に遅くなってしまう、というパターン。これは単純にもっと思い切り良く踏んでやることが必要ですね。
また、カウンターの量が多すぎる、あるいはカウンターを入れるタイミングが早すぎるというのもよくあるパターン。これだと、リアがグリップを回復するのが早すぎてきれいにドリフトできないし、場合によってはアンダーが出て曲がりきれずコースオフします。
ここまでが完璧にできて、それなりにかっこよくドリフトができるようになったら、だいぶドリフトがうまくなっているはずです。次は、サイドを引かないドリフトを目指しましょう。
では最後にCarlswoodでのドリフト動画完全版をどうぞ!